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       精神医療を考える(Ⅰ)​

 現在、私は自らの判断で減薬を開始した8年前にまとめた原稿「冤病ー双極性障害Ⅱ型と診断されて」に最新の知見を踏まえて、さらに加筆修正を行っていますが、そのための「抜き書きノート」から、現在の精神医療の実態や、向精神薬による薬害、薬物療法と対峙する「精神療法」の考え方などを述べた参考文献を、いくつか紹介していきたいと思います。

「薬に頼らず元気なこころを取り戻す」には、先ず、何より、「正しい知識を得ること」が出発点と思います。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

先ず、(Ⅰ)として、『精神医療の現実』(嶋田和子・萬書房・2014年刊)、「発達障害バブルの真相」(米田倫康・萬書房・2018年刊)(前半部)から、ご紹介します。

 

​第1回

 「うつ病」から「双極性障害」への診断のし直しは一種の流行病である。

大手製薬会社のイーライ・リリーのHP[双極性障害情報サイト]には次のような一文がある。

「約15000人の双極性障害の患者さんを一定期間、追跡した海外の研究では、約5人に1人は自殺で亡くなっています」。

この数字は人々に恐怖をもたらし、「一生服薬も仕方がない」と患者に思い込ませるのに十分な数字であった。

「放置しておくと重症化するという言説」は、うつ病や統合失調症同様の疾患啓蒙に姿を借りた製薬戦略の1つだが、双極性障害も、うつ病や統合失調症同様、重症化の最大の原因は、向精神薬そのものの処方であった(続く)。

 

 日本で抗うつ薬(SRRI)を服用しているのは全体で263万人で、そのうちパキシルは123万人、ルボックスが82万人、ジェイゾロフトが58万人である。

2000年前後の「うつは心の風邪」という製薬会社のキャンペーンでなぜ、うつ病患者が急激に増えたのか?それはうつ病そのものが急激に増えたのではなく、「自分はうつ病ではないか」と医療機関を受診した数が増大した結果に過ぎないのである(続く)。

 

 重篤なうつ病患者は実は全体のわずか13%に過ぎない(米・「ニューズウィーク」2010年)。

日本では、軽・中度のうつ病患者にも抗うつ薬を投与されている。

 軽・中度のうつ病患者は、「うつ病キャンペーン」で病院を受診し「双極性障害」(躁うつ病)と診断し直され、抗うつ薬の代わりに気分安定薬や適応拡大した抗精神病薬が投与されている。


 米国では、パキシルに限らず、全ての抗うつ薬について、【自殺促進の可能性】(若者は2倍高まる)とされ、添付文書には「警告」表示を勧告したが、投与の制限や使用禁止の措置に至らず、徐々に韓国の内容そのものが緩やかにされ、欧州各国もパキシルを「禁忌」から「警告」へ緩和されていった。

 日本の厚労省は、2003年に、18才未満のうつ病患者に対するパキシルの「使用禁忌」の勧告」を出したが、米国同様に製薬会社や医師会の反発で、「禁忌」から「警告」に緩和された。

 2013年、厚労省の機関で医薬品医療危機総合機構の報告書によると、「抗うつ薬とプラセボ(偽薬)を18才未満の子供に試したところ、プラセボでも6割で改善効果が見られ効果に有意差がなかった」。つまり、抗うつ薬は、単なるうどん粉、そば粉と変わらないのである。

 そもそもSRRI(抗うつ薬)の安全性や効果を確かめる治験を子供を対象にやっていない。

 

 1980年、「DSMⅢ」の執筆者たちですら、「どこまでが疾患で、どこからがしっかんでないのかという境界線も、明らかに独断的である。なぜうつ病の9つの特徴的な症状のうちの5つがあれば、うつ病と診断できるのか、なぜ6つではないのか、4つではいけないのか?」

「DSMⅠ」では「112」の精神障害であったものが、「DSMⅣ」(2003年)では「374」に増大している。そして最新の「DSMⅤ」(2013年)では、子供や配偶者などを亡くした後の落ち込みさえ2週間続けば、うつ病と診断されるのである(続く)。

第2回

 

 常用量離脱症候群は、ベンゾ系の抗不安薬や睡眠薬の耐性によって、飲みながら既に離脱症状が出ている状態で、少しでも減らすとその症状はさらに悪化してゆく。「飲み続けるの地獄なら、減薬するのも地獄」の状態に追い詰められる。

離脱症状の中には、胃潰瘍や抑うつ、不安、衝動性などが現れるが、多くの精神科医は、ベンゾの離脱症状を認めず病気の悪化ととらえ、さらにベンゾが処方されていく。

 

 ハルシオン(ベンゾ系睡眠薬)とデパス(抗不安薬)は、特に離脱症状が激しく幻覚や幻聴も起こりうる。向精神薬の一気抜きは危険過ぎ。徐々に減らすのがセオリー。

 

 離脱症状はどんなに苦しくとも必ず終わる。

 

 減薬が進んだ段階で「生理が戻った」という女性は非常に多い。つまり薬が内分泌(ホルモンバランス)に影響を与え、時間と共にバランスが自然に戻ってきたということ。

 

 神田橋條治(精神科医)は次のように述べる。

 

【精神科の診断名にさしたる根拠はありません。現象形、平たく言うと見せかけでつけている分類です。経過の観察や治療への反応で確かさが加えられています。特に統合失調症は確たる証拠はありませんし、本質として幾つかの病のとりあえずの寄せ集めであり、変だけどよく分からないに毛がはえた程度の確かさなのです。

 

 診断例の圧倒的多数が統合失調症と誤診されているのは当然なのです。よく分からないのでくずかごに入れていたのですが、患者や家族はそのことを知りませんし、当の精神科医も失念して、診断が確定したと思い込んでしまったのです。

 

 化学薬品は生体にとって異物であり、本質として有害物であり、脳の病的機能だけを抑制したり賦活したりする、なんて都合の良い薬品なんてありゃしない、という常識の欠如などが悲劇を生んでいるのでしょう】(続く)

 抗不安薬睡眠薬などのベンゾ系向精神薬は、少ない量の服用でも依存状態になる可能性がある。国によっては処方期間を2~4週間に制限してる場合もある(イギリス、ニュージーランド、ノルウェーなど)。しかし、日本では処方期間の規定はなく、数ヶ月、長い人では数年、数十年にわたって処方されているケースがまれではない。

 

 欧米各国の医療従事者の間では、ベンゾで「常用量依存」になることが広く認められているが、日本ではこうした常識さえ医師が知らなかったり、「一生飲んでも安全な薬」と伝え、数十年も処方し続けている例が驚く多い。しかも、処方の際に、患者の中で依存や離脱症状を経験する可能性にきちんと説明を受けた人は1人もいない。

 

 2010年、国際麻薬統制委員会(INCB)の報告書では、「ベンゾ系の消費量で、日本は年間20億9千万錠で断トツで世界第一位である。この日本での大量の消費は、不適切な処方パターンと、それに起因する乱用が反映されたものだと思われる」と記されている。

 

 日本の精神医療における一番の問題は、向精神薬の「多剤大量処方」にある。これは主に統合失調症治療でなされてきたが、抗うつ薬(SRRI)導入以降のうつ病ブームで、うつ病治療においても同様の多剤大量処方が増大している。

第3回

 抗不安薬睡眠薬などのベンゾ系向精神薬は、少ない量の服用でも依存状態になる可能性がある。国によっては処方期間を2~4週間に制限してる場合もある(イギリス、ニュージーランド、ノルウェーなど)。しかし、日本では処方期間の規定はなく、数ヶ月、長い人では数年、数十年にわたって処方されているケースがまれではない。
 

 欧米各国の医療従事者の間では、ベンゾで「常用量依存」になることが広く認められているが、日本ではこうした常識さえ医師が知らなかったり、「一生飲んでも安全な薬」と伝え、数十年も処方し続けている例が驚く多い。しかも、処方の際に、患者の中で依存や離脱症状を経験する可能性にきちんと説明を受けた人は1人もいない。
 

 2010年、国際麻薬統制委員会(INCB)の報告書では、「ベンゾ系の消費量で、日本は年間20億9千万錠で断トツで世界第一位である。この日本での大量の消費は、不適切な処方パターンと、それに起因する乱用が反映されたものだと思われる」と記されている。
 

 日本の精神医療における一番の問題は、向精神薬の「多剤大量処方」にある。これは主に統合失調症治療でなされてきたが、抗うつ薬(SRRI)導入以降のうつ病ブームで、うつ病治療においても同様の多剤大量処方が増大している。

 精神科の治療の中にECT(電気ショック療法)というのがある。

 

 これを1938年に発明したイタリアのウーゴ・ツエルれッティイが最初の用いた道具は、「死刑囚の電気椅子や豚の屠殺場などで使われていたものであった。
 

「脳電気ショックの恐怖再び」の著者水野昭夫(精神科医)によれば、自らが行ったその療法を徹底的に自己批判しているが、療法の実際は次のようなものであった。
 

「電気は100~150Vの交流電流で、2つの電極を左右の目の上あたりに当ててスイッチを押すと電流が脳の実質の間を走り回るのです。そして患者さんは、てんかんのような全身痙攣を起こし苦しみます。その瞬間、呼吸も心臓も止まります。

顔はチアノーゼを起こして、口からは泡を吹き【死と隣り合わせ】と表現して良いでしょう(麻酔は施されていた)」。
 

 日本でECTが導入された70年ほど前には、全く療法前に麻酔は施されていなかった。又、「電パチ」といい、医師が患者に対して懲罰的に行われていたこともあった。現在のそれは、静脈麻酔薬や筋弛緩薬を用い、全身痙攣を起こさない修正型ECTが主流である。
 

 2010年、日本精神神経学会ECT検討委員会の調査に調査によると、実に【4割の病院】で実施され、さらにそのうちの13施設(対照の3.7%)では、昔ながらの【無麻酔、全身痙攣のECTをまだ行っている。
 

 水野は前掲書の中で「処置する医師も看護師も感電を恐れるような電流で」、「脳細胞を破壊するに十分な容量」と述べ、さらに「記憶障害を起こしやすくなる。物忘れが激しくなる。感情の動きが乏しくなり溌剌とした表情がなくなる。などの後遺症は、ほとんど【100%の患者さんに現れるのです】」と証言している。
 

 普通は入院して1クール(6回くらい)が通常だが、最近では外来で・・・その病院で治療を受けた女性は、視界の異常、見るものすべてが45度傾いて見えるようになったケースもある。
 

「懲りない精神医療 電パチはあかん」の著者笠原一郎医師は、「結局、ESはその場しのぎでしかなかった。医師と看護師の能力の低さの象徴でしかなかった」と告白している。

 

第4回

 

 学校や保育園などから受診や服薬を強要されるようなことも実際に起きている。又、診断がでたことで差別的な待遇を受けている。「本人のため」と抗いがたい苦しい立場に置かれている当事者や保護者も多い。

発達障害という言葉だけが一人歩きしている。

 その実態が分からぬまま、ただただ不安だけが広がっている一面もある。

いじめや自殺などの社会の問題や、個人が人生において抱える困難について何でも原因を発達障害のせいにする風潮が広がっている。

 2005年4月から施行された「発達障害者支援法」第二条第一項には以下のように発達障害について規定している。

「この法律において発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他、これに類する【脳機能の障害】であって、その症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう」

 実際に「発達障害」かどうかの診断は、診断基準に基づいた問診(チェックリスト)だけで、最終的には精神科医の主観でしかない。

 発達障害を【先天的な脳機能障害としておきながら、実は脳を実際に検査してその結果を基に診断をしているわけはない】。

 発達障害者支援法自体が、「専門家は正しい」という前提で整備されている。この法律は国を挙げての発達障害を早期発見するという大号令であり、早期発見のために専門機関につなげることが最善であるという前提での大規模インフラを指示したものである。

 保育士も教師も、健診に関わる保健師も、少しでも発達障害が疑われる子供たちを専門機関につなぐこと自体が絶対的に正しいという単一の視点で教育されている。

 発達障害の診断のみならず、精神科診断の領域は、科学の域に達していないのが実情で、複数の精神科医が同じ人物を診てもそれぞれ診立てが全く異なるのは普通なのである。

 19人を殺害した相模原障害者施設襲撃事件の犯人は、事件を起こす前に措置入院をしていたが、それに関わった4人の精神科医の診断はすべて異なり、合計7つもの病名がつけられていた。

 

第5回

神科診断が、科学的な根拠を示すことなく、過剰な権限、影響力を持ってしまいしばしば人権侵害が正当化されている。

 本来、発達障害でない人まで発達障害と誤診される可能性や、その弊害について評価する必要がある。今まで発達障害者支援行政は、この問題について全く向き合ってこなかった、というより意図的に無視を続けてきた。

「DSMⅣ」(精神障害の診断・統計マニュアル)の注意書きには「どのような定義によっても、精神障害の概念に正確な境界線を引くことがないことを認めなければならない」とあるが、その編纂責任者のアレン・フランセスは次のように述懐しているのである。

【診断の氾濫を食い止めようと努力したにも関わらず、DSMⅣは診断のバブルを膨らませるためにずっと乱用されてきた・・・子供たちの間に精神疾患の三つのまやかしの流行が新たに発生するのを予見も予防できなかった。ADHD、自閉症、小児性双極性障害(BD)の3つである・・・診断インフレのせいで、余りにも多くの人々が抗うつ薬や抗精神病薬や抗不安薬や睡眠薬、鎮痛薬に依存するようになっている。我々の社会は薬漬けになりつつある】。

 診断インフレの第一波は1999年頃から始まった「うつ病バブル」。「うつは心の風邪」という製薬会社が作り出したフレーズ。それは新しい抗うつ薬(SSRI)の販売戦略であり、製薬会社と利権でどっぷり癒着している精神科医の多くは無批判にそれに乗っかった。

 1999年~2005年 【うつ病患者が6年で2倍】

 1999年~2007年 【抗うつ薬市場が6倍】

 1996年~2012年 【精神科医数が1.6倍】

 1996年~2011年 【心療内科数が5.8倍】

【それでも、あなたは向精神薬を飲み続けますか?】

第6回

精神科医は80年前には、何ら科学的な根拠を持たずに医療行為を行っていたことから、「医者もどき」と、心理学者や精神分析医からさげすまれていた。彼らは科学的な診療の根拠を求めた。

これに莫大な利権を求める製薬会社の向精神薬の開発とが結びついたのだ。新薬の特許申請から認可まで長期の時間が時間が必要とされることから、膨大な研究開発費をペイするために、中身はそのままで、名前だけ変えて次々と発売された向精神薬も多い。

今更、言うまでもなく、脳の中枢神経に直接作用する睡眠薬や向精神薬が、人体にいい影響を与える訳はない。成分は麻薬、覚醒剤、農薬と何ら変わらない。それらは、薬理的特性から逆に薬への依存性をもたらし、長期間、多剤大量の投与による薬害ー認知能力・運動能力の減退などから、退職・離婚、凶悪犯罪や自殺・中毒死までも引き起こしてしまう。
他に減薬・断薬による禁断症状(離脱症状)、後遺症は必ず残る。仮に断薬に成功しても、決して元の状態には戻らないという見解もあるのだ(「心の病に薬はいらない」内海聡・かんき出版・2013年刊)。

1990年代後半からの、15年連続3万人を超える自殺者は、世界でもまれに見る数字である。全国自死遺族会の聞き取り調査(2006年以降)によると、そのうちの約7割が精神科を受診し向精神薬を処方されていた(特に20代)。しかも、飛び降りや飛び込みの100%は向精神薬の服用者であった。

毎月、全国の精神病院で薬物中毒で死亡退院する数は1500人以上(1年間で18000人)にも及ぶ。2010年度、東京都監察医務院の不審死14396件のうちの2938件の行政解剖の結果、中毒死の半数以上が医薬品によるもので、その96%が精神科処方薬であった。ここで重要なポイントは、本人が自殺目的で大量服用したのではない、ということ。つまり、【精神病院内ではなく、外来通院している状況で、主治医の処方を守り、決められたとおりに飲んでいたら不審死に到ってしまったのだ】。ある意味、【医療殺人】ともいえる異常な実態がそこにある。東京だけで843人、全国では毎年、5000人~8000人もが、【向精神薬による中毒死】を遂げていることが推定される。

さらに薬が先に開発されて、その薬を売るために都合のいい精神疾患が作り出されているのが現実なのだ。社会不安障害、気分変調症、軽度・中度の発達障害、大人の発達障害等々。そいえば、急増した現代の【うつ病などは元々、存在しない】のだ。

うつ状態は、日常の悩みによって誰にでも起こる「精神状態」であって、元々、医学で治すものではない。それぞれの抱える問題は、自分自身で解決するしかないのだ。

 

第7回

 

 日本の精神医療の中で、精神病か否かの基準として用いられているのは、米国精神医学界の診断基準である「DSMーⅤ」(2013年)では、改定の度に夥しい数の精神病が発明、追加され続けている。それも精神科医たちの多数決で決められ、さらにその特別委員会の68%が製薬会社から金銭の授受を受けている。
 

 幼児性双極性感情障害、幼児性統合失調症、発達障害、PTSD(心的外傷後ストレス症候群)、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、アスペルガー症候群等々・・・。それらを丹念にあてはめていけば、精神病に該当しない人間など地球上に一人もいなくなるその狙いは明らかである。製薬会社や病院の利益のためである。さすがに、そうした精神病の乱立・膨大な薬漬けの方向性を批判する発言が、2012年、米国精神医学会前会長のアレン・フランシスによってなされた。以下はそのインタビューから紹介する。
 

「『DSMーⅣ』に基づいて次の3つの疾患が急増した。ADHDは発生率が3倍、自閉症は20倍、幼児性双極性障害Ⅱ型は製薬会社の宣伝も手伝い20倍に増加した」。
 

「米国では、精神科診断が正常な人の領域まで拡大し、日常生活の様々な問題を、多くの人々が精神障害を抱えていると診断され、そして、本当に精神疾患を病んでいて診断がきちんとされれば、生活が大きく向上し、場合によっては命を救うことになるかもしれない患者さんたちに適切な注意が払われていないという問題があります。米国では誤診が多く、
日常生活の問題や失意を精神疾患として病名をつけるのが非常に多いのです」。

 

「誤解を生みやすい考えの一つが、精神科の問題は全て科学的アンバランスによるもので、服薬で病気が治るという考え方です。この考えによって、製薬会社は過去30年にわたって薬を売ることが出来たのです」。
 

 脳内神経伝達物質セロトニンやドーパミンの不足や過剰で「うつ病」や「統合失調症」が起きるというモノアミン仮説は、単なる虚構である。現在に到るまで、実際に脳内のセロトニンなどの量を測定は出来ないのであり、逆に「うつ状態」の人であっても、セロトニンがが多い人もいるとも考えられている。なぜ、人々が不安やうつ状態になるのか、その
原因は全く分かっていないのである。ということは、それに対する治療法も完全には確立されていないのである。

 

「双極性障害Ⅱ型を作ったのは、患者さんを抗うつ薬による医原性の弊害から守るためだった。文献を調べると、抗うつ剤を服用中に躁状態に変わったり、躁うつのサイクルが短くなったり、双極性患者と似た症状を様々形で呈する患者がいたから。しかし、実際にはDSMーⅣ以後、双極性障害の発生率は2倍になった」。
 

 この箇所は、、当初、心療内科で「うつ状態」と診断されて、抗うつ薬と抗不安薬を処方され、大学病院のインターンの問診(チェックリスト)だけで、簡単に「双極性障害Ⅱ型」と診断された私自身のケースがそっくりあてはまる。
精神医療被害連会議の中川聡氏は次のように述べている。

 

「ある診断が、広く行われるようになったら疑うべしということです。人間はすぐには変わりませんが、物の名前はすぐに変わります。もし、突然、多くの患者さんが同じ診断名をつけられるようになったら、それは患者が変わったのではなく、考え方が変わったからであり、多くの場合、製薬会社が自社製品を売るために、その病名を動かしているから・・・『DSMーⅤ』の信頼性は、とても受け入れられない」
 

 アメリカ国にの様々な学会が、この「DSM-ーⅤ」に対して公然と反対声明を出し、オーストラリアでも、その安易な適用が阻止されつつある。
 

 元々、精神疾患の診断は、あくまでも精神科医や心療内科医、心理判定士などの主張に基づくもので、マニュアルに示される症候群の項目が一定数以上該当すれば、病人にされてしまうのである。
 

 ある精神疾患者が、Aという医師からは「自律神経失調症」、Bという医師からは「うつ状態」、Cという医師からは「双極性障害」というふうに。又、10人ほどの精神疾患者を装った人間に一様に「統合失調症」と診断し、最後まで、健常者であることに誰一人として精神科医が気がつかなかったという象徴的な事例もある。患者自身が「幻覚は見えてい
ない」と言い張っても、「いや、見えているはずだ」と、無理やり「統合失調症」と診断を下す精神科医さえ現実にいるのである。

 

 何をもって正常と異常を分けるのか。その診断において、個人の持つ能力や個性、生育歴や環境という細かい部分まで決して考慮されない。
 

 現在の精神科医の診断は、このように科学的な根拠を持たない主観に基づくもので、急患や重篤な患者を除き、そのほとんどが誤診・過剰診断といってもいい。そして、一旦、病名をつけられると、診断の見直しなどすることは絶対なく、以後、長期間にわたって、漫然と多剤大量処方が行われ、本物の薬剤性の精神疾患者(医原病)にされてしまうのであ
る。

 

 患者が薬の副作用や離脱症状を訴えても、「それらは、病気が悪化したから」と言い、「この病気は一生治らない」「薬を一生飲み続けなければならない」と洗脳し、さらに多剤大量処方を繰り返してゆくのである。
 

 一体、誰しもが「不安」になったり、元気がなくなることはある。でも、それは人間の自然の適応の1つであって病気でも何でもない。
 

 心の問題は、直面している個別具体的な問題解決を自分で解決することしかないのである。「うつは心の風邪」「不眠はうつのサイン」「2週間、うつ状態が続いたら、心療内科へ」といったキャンペーンは、製薬会社の新型抗うつ薬(SSRI)の販売増大を狙った疾病喧伝でしかないのだ。

 

第8回

 

 向精神薬による薬害の全ての責任は、製薬会社と精神科医や心療内科医、薬剤師、そして精神医学会やうつ病学会の主張を鵜呑みにしてきた厚生労働省や、受診キャンペーンを行ってきたNHKをはじめとするメデア、及び、周辺の協力者にある(2012年、精神医学会は「新型うつ病」はメデアの造語であると宣言)。

 

 これらは、皆、利権で深く結びついている。製薬会社は、新薬の副作用は全くないと精神科医たちを広告塔として利用し、研究費の名目で多額の資金供与を行っている。例えば、「向精神薬には全く副作用はなく、安心して飲める」と主張し続けていた「日本うつ病学会」理事長・防衛大学教授は、380万円もの資金を製薬会社から受け取っているのである。

 

 実は向精神薬の長期間・多剤大量処方は、日本だけの問題であり、他の先進国ではその医療行為自体が犯罪であり、アメリカでは、同様の処方で死亡事故が起きれば、医師には殺人罪が適用される。

 

   現在、中医協の資料中で海外のガイドラインによると、JPA(アメリカ精神医学会)やNICE(英国立医療技術評価機構)では、日本で横行している抗精神病薬・抗うつ薬の併用はエビデンスがないことから行われず、それぞれ単剤での処方が推奨され、睡眠薬や抗不安薬のベンゾジアゼピン系の薬の依存性にも注意を払っている(英国では、ベンゾジアゼピン系薬剤にへの訴訟が12000件起こされた。日本はベンゾジアゼピンの世界最大の消費国)。

 

 このように、欧米では精神疾患者に対して単剤による治療が推奨され、その分、薬と病状悪化との因果関係が明確であり、製薬会社への訴訟は激増し、年々、膨大な罰金記録を更新しているのだ。

 

 逆に言えば、日本での多剤大量処方は、向精神薬の副作用や相互作用を曖昧にし、薬相互の因果関係や処方責任者を隠蔽する結果をもたらしているのである。もし、はじめからその隠蔽を意図していたとすれば、医療犯罪行為は、より悪質・巧妙であるとさえ言える。

 

 こうした向精神薬の長期間・多剤大量処方による被害に対して、2008年、いくつものマスコミでその所在が報じられ、2009年、精神医療被害連絡会をはじめ被害社会によって、厚生労働大臣及び、厚生労働省関連各課に、300通の署名と主に、多剤大量処方問題の改善要望書が提出された。

 

 2010年、厚生労働省内の「自殺・うつ病対策プロジェクトチーム」が「服薬への取り組み」というレポートを公開した。それには「自殺と精神科受診・薬との関連を認めたこと。30万件の処分分析を行うこと。明らかに不適切と思われる事例を把握・確認することを宣言したこと。医療機関や薬局に、患者への薬剤に関する効果的な情報提供について検討していること」が盛り込まれていた(全国自死遺族連絡会の聞き取り調査によると、2010年4月~2013年2月の合計1001人の90%以上が精神科受診をしていた)。

 

 依然として、薬害について「患者が薬物への依存という認識が不足しており、医師に処方を求めてしまう」と、患者側の責任であるかのような表現も多々見られ、決して十分な内容ではなかったが、初めて被害者の声が反映された画期的なものであった。

 

 それに伴い、2012年3月、精神医療被害連絡会により「精神医療改善のための要望書」が厚生労働省に提出され、同年9月9日、厚生労働省は「過量服薬防止について」という勧告を、全国の地方自治体、精神医療主要4団体に対し行った。初めて、国が向精神薬の多剤大量処方が不適切であることを認めたのである。

 

 又、それを受けて日本精神医学会は「大うつ病の治療のガイドライン」をまとめ公表した。その内容は、「軽度のうつ病に対して薬物療法を制限。ベンゾ系の長期処方を否定。同種同効果の多剤大量処方を否定」するなど若干、評価できる点もあるが、

 

1.    DSMの妄信的な採用。不安とうつとの混同を明確に除外していない。
2.    うつ病ではなく躁うつ病だったという近年、流行の主張を擁護。
3.    誤診・薬害による薬剤性精神疾患を全く認めず。
4.    診断とそれに応じた投薬という手順が守られていない。
5.    エビデンスのないECT(電位ショック療法)を相変わらず推奨。
6.    エビデンスのない抗精神病薬の増強療法を追認している。

 

 まだまだ不十分なものであった。相変わらず「多剤大量処方やデタラメ処方が、専門知識のない一部の医師により行われている」「適応外処方や医師の裁量を容認する」など、責任逃れの意思が強く読み取られる内容であった(続く)。

第9回

 向精神薬の歴史

 19C以降の向精神薬の主体は、アルコール・アヘン・モルヒネ・コカイン(フロイトが製薬会社と提携し、その処方を勧めた)・バルビダール・ベンゾジアゼピン(睡眠薬・抗不安薬)・SSRI(抗うつ薬)と変遷してきた。

どの薬物も最初は依存性や副作用のない薬と、先の薬の代替物として登場するという歴史を持つ。言わば、「毒をもって毒を制す」の繰り返しであった。

 イギリスでは、ベンゾジアゼピンに対して12000件もの訴訟が起こされ、欧米では完全に淘汰された薬で、強力な耐性や依存性を形成し、現在、睡眠障害には2週間の服用が限度とされている。

 ベンゾジアゼピンによる睡眠は、本物の睡眠ではなく「鎮静」(気絶)なのである。しかし、日本は現在、多くの精神科医たちによって、長期間にわたるベンゾジアゼピンの処方が当たり前のように行われ(中には数十年間も服薬している患者がいる)、世界第一位のベンゾジアゼピンの消費国なのである。

 日本は、ベンゾジアゼピン系薬品に関して、その規制が欧米に較べ約30年は遅れているのである。

 

 現在の精神医療の実態

 病気の種類を次々と増やし(捏造)、「DSMーⅤ」(約500種類)に基づく膨大な誤診・過剰診断。現在、日本の精神疾患者は400万人にものぼる(国民の五大疾病の第一位)。その数、実に全国民の30人に1人の割合にあたる。1999年には精神疾患の患者数は200万人だったのに、わずか15年でほぼ倍増(特にうつ病の増加が顕著)になっているのはなぜなのか?

年間18万人超が精神科に強制入院させられ、少なくとも1日1万人が法の名の下に手足や胴体を縛られている、このような事態を異常と思わず、無視し続ける社会こそが異常なのである。

 精神科医の科学的な根拠に基づかない主観による診断と、多剤大量処方による「薬漬け」と「3分間治療」。

精神科医の多くは、病気の悪化原因を、病気の進行に求め、向精神薬の薬害(副作用・離脱症状)や、自ら処方した薬で本物の精神病患者(医原病)を無数に作り出しているいるにも関わらず、それを決して認めようとしない。

薬の「添付文書」を無視し、十分なインフォームド・コンセントをせず、「とりあえず、この薬を出しておきましょう」「効く薬、ないんだよなあ」と漫然と長期間にわたって処方をし続ける。

 「この病気は一生治らない。良くて寛解。だから薬を飲み続けなければならない」と患者を洗脳し続け、依存性の強い薬を処方し続け、患者を一生、病院につなぎ止めておく(世界最大のベッド数を持つ精神病院については別項で扱いたい)。

副作用が出てくるとそれを消す薬をさらに出したり、診断名を変更して、副作用そのものの存在を抹消する。

 これが現在の日本の精神医療の実態である。診療報酬制度の下、病気を治すのではなく、病気や薬を売ることに没頭する姿がそこにある。

多数の精神科医の別名は、実は「白衣を着た薬の売人」なのである。

誤診・過剰診断、薬漬け。そしておとなしく黙々と薬を飲み続ける400万人の精神疾患者。正しくは、病気になったのではなく、病気にされた犠牲者なのである。まるで、牛や鶏、豚のように。

 かつて、日本医師会会長であった武見太郎が言った次の言葉が思い出される。

「精神医療は牧畜業だ」

 あなたは、それでも、一生、牛や鶏・豚のようにされたままでいいのですか?

第10回

 発達障害という言葉だけが一人歩きしている。その実態が分からぬまま、ただただ不安だけが広がっている一面がある。

いじめや自殺などの社会の問題や、個人が人生において抱える困難にについて何でも原因を安易に「発達障害」のせいにする風潮が広がっている。本質的な問題に向き合ったり、解決したりすることを避けるために「発達障害」という言葉が都合よく使われている。

「発達障害者支援法」(2005年4月)の第二条第一項には、次のように規定されている。「この法律において『発達障害』とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥・多動性障害その他これに類する【脳機能の障害】であって、その症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう」。
                                              
 実際の診断は、「DSMーⅤ」に基づいた(かなり簡略化された)「チェックリスト」による問診で行われるが、最終的には意思の主観で行われる。

 ADHDに関して、国立精神神経医療研究センターは、「病気や障害の指標となる決定的なバイオマーカーが未だに発見されておらず、その診断に際しては、経験豊かな専門家による主観的な行動観察に専ら頼らざるを得ない現状があります」と公表している。

 発達障害を先天的な脳機能障害としながら、実は脳を実際に検査して、その結果を基に診断しているわけではない。

 発達障害者支援法自体が「専門家は正しい」という大前提で整備されている。国をあげての、発達障害を早期発見するという大号令であり、早期発見のために専門機関につなげることが最善でるという前提での、大規模インフラ整備を指示したものなのである。

 保育士も教師も、健診に関わる保健師も、少しでも発達障害が疑われる子供たちを専門機関(精神科)につなげること事態が絶対的に正しいという視点で教育されている。

 本来、発達障害でも何でもない人が、発達障害と誤診される可能性や、その弊害について評価する必要がある。今まで、発達障害者支援行政は、この問題について全く向き合ってこなかった。いや、「意図的に無視し続けてきた」といった方が正確なのである。

「DSMーⅣ」の編纂責任者で精神科医のアレン・フランシスは、後に以下のよう述べている。

「診断の氾濫を食い止めようと努力したにも関わらず、DSMーⅣは、診断のバブルを膨らませるためにずっと乱用されてきた・・・子供たちの間に、精神疾患の三つのまやかしの流行が新たに発生するのを予見も予防も出来なかった。ADHD、自閉症、小児双極性障害(BD)の3つである」

​​第11回

 診断インフレの第一波は1999年(平成11年)頃に始まった。「うつ病バブル」。
1999年~2005年の6年間に【うつ病患者は2倍に】
1999年~2007年の9年間に【抗うつ薬市場が6倍に】

 うつ病バブルの人為的要因

1 専門家による不誠実な喧伝
2. SSRIの販売開始
3. 市場拡大を目指す製薬会社のマーケティング
4. 治験広告の解禁 
5. 【自殺予防=うつ病治療】とした短絡的な行政の自殺対策
6. うつ病概念の拡大曖昧性
7. かかりつけ医等へのチェックリストの売り込み
8. 一般人への             〃
9. 精神科・心療内科の開業ラッシュ

 例えば、うつ病の診断の際に使用されたチェックリスト(グラクソ・スミスクライン社)が、2004年6月22日「読売新聞」朝刊に広告として掲載された。

 毎日、つらかった。頭が重い。眠れない。肩がこる。腰が痛い。だるい。食欲がない。興味がわかない。気分が落ち込む。このうち5項目に該当すればうつ病と診断されるのである。そして、広告の最後には大きく次の言葉が書かれていた。

【「うつ」早めにお医者さんに相談して良かった】。

 一見して分かるように、誰にでも当てはまるような症状を掲げることで、うつ病かもしれないという不安を煽り、受診に導くためのものであることは明瞭である。「DSM」に記載されている診断基準をさらに簡略化したものになっていることに注意。

うつ病の早期発見、早期治療によって、自殺を防げるという精神産業のプロパガンダにすっかり騙されてしまった政府は、うつ病の早期発見を絶対的に正しいものとして自ら推進していった。その一環として、かかりつけ医や産業医、小児科医などがうつ病の対応が出来るようにチェックリスト類が広く普及していったのである。

  

 本来、医師としてすべきことは、現れている精神的症状が、本当に精神障害によるものなのか、他の身体的原因によるものなのか、しっかり鑑別することにある。

うつ状態を引き起こす身体的問題は、代表的なものでは甲状腺異常や副腎皮質の疲弊ですが、鉄分の欠乏、血糖値調整障害でも起こるのである。

 1999年、新型抗うつ薬SSRIが日本で一斉に販売開始された。その後、「薬を飲めば必ず治る」「副作用はない」と喧伝してきた専門家の嘘が次々と暴かれ、うつ病の診断や治療が相当杜撰ななものであったことが、次々と報道され、初めて精神医療のデタラメさが広く国民の知るところとなり、2009年、「うつ病バブル」のかつての勢いは衰えた(消えてしまったわけではない)。この間、約10年。そして、次の仕掛けられたかのように出現した精神疾患バブルが「発達障害」であったのである。

第12回ー以下、『発達障害バブルの真相』(米田倫康・萬書房・2018年刊)からー

 

 

 

 

 

 ADHD(注意欠陥・多動性障害)用の向精神薬ストラテラの売り上げは、2009年~2017年までの【8年間で50倍】にもなっている。

「発達障害」の急増は、かつての「うつ病バブル」以上であり、より巧妙かつ大規模になっている。

 その歴史起点となったのは、2002年文科省が発表した「今後の特別支援教育の在り方について(中間まとめ)」にあり、一躍センセーショナルな報道となった。それによれば「学習障害(LD)、ADHD、高機能自閉症の児童生徒が6%も普通学級に存在する」と明言したのである。

 この数字は、「DSM」等を基にして作られたチェックリストを参考に、有識者が独自に作成したものを、【現場の教師が判定して】割り出されたもので決して有病率そのものを示すものではなかった。

 

 全部で75項目あるチェックリストの一部を以下に掲げる。

聞き漏らしがある。内容をわかりやすく伝えることが難しい。音読が遅い。読みにくい字を書く。独特な筆順で書く。課題や遊びの活動で注意を集中し続けることが難しい。遊びや余暇活動におとなしく参加することが難しい。大人びている。ませている。皆から「○○博士」「○○教授」と思われている。仲の良い友達がいない。他の子供たちからいじめられることがある。

いいえ、多少、はいの三段階で回答するというものであるが、チェックリストそのものがいかに異常で過っているものであるか一目瞭然であろう。そこにあるのは、平均や普通からはみ出した個性豊かな子供たちなのである。

 

 2012年、文科省はこれと全く同じチェックリストを使った調査を行い、「発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒が、【6.5%】いる」と、紛らわしい表現を使った発表を行い、報道は「小中学生の6.5%に発達障害の可能性」(日経新聞2012年12月5日)と、まるで有病率であるかのような文脈で数字が取り扱われていった。

 実際に全国の各自治体で同じチェックリストを使った調査結果では、1%台~10%台と大きなばらつきがあり、この調査自体が疫学的意味を全くなしていないのである。

こうした詐欺的ともいえる手法で、数字を作り上げ、発達障害支援の重要性を煽り立てた一部の有識者の思惑通り、事態は急展開していった。

 この動きに呼応するかのように活発な動きを示したのが「ADHD関連団体」である。当時、ADHD薬が日本では販売承認されていなかったこともあり、薬の早期承認や、支援のための法整備を求める声が大きくなり、発達障害者支援法を作るための超党派の議員連盟も結成されました。

 教育委員会や文科省からは、発達障害の早期発見の重要性ばかりが伝えられ、このチェックリストが抱える問題点について全く知らないまま教師は活用している。

 教師の視点は、いかにその子の才能を伸ばすかではなく、【いかに異常を見つけ出すかに変わった】。このチェックリストは、教師にとっては発達障害を早期発見するための有用なツールとなった。

 このように、発達障害は早期発見、早期治療という風潮が作られてしまったが、【間違って発達障害と疑われてしまうことなど問題とはされず、それよりも発達障害が見逃される方のみが問題とされてしまった】。

【発達障害の正しい有病率など、誰も算出できる訳がないのである】。

第13回

 当時の総務省の所見は以下のようなものであった。

「文科省及び厚労省は発達障害が疑われる児童生徒の早期発見を推進する視点から、次の措置を講ずる必要がある。

厚労省は乳幼児検診における発達障害が疑われる児童の発見ための・・又、都道府県及び市町村に対し、保育所在籍時における日々の行動観察に当たっての着眼点や項目を共通化した標準的なチェックリストを活用方法と併せて示すこと。

 

 文科省は、市町村教育委員会に対し、就学時健診における発達障害の発見の需要性を改めて周知徹底するとともに・・又、都道府県教育委員会及び市町村教育委員会に対し、幼稚園から高等学校までの発達段階における日々の行動観察に当たっての着眼点や項目を共通化した標準的なチェックリストを活用方法と併せて示すこと」。

 これは、まさに、チェックリストを使わなければ発達障害を見落とすと言わんばかりの内容で、リスクを承知の上で慎重に使うならまだしもそれを神格化し、ともかく【早期発見至上主義】ともなり、その暴走を助長していった。

そして、本来の目的であった発達障害者の支援という意味合いは薄れ、【魔女狩り】にも等しい政策となってしまった。

 

 魔女裁判では、聖書の一節を言いよどむことなく一言一句間違わずに暗唱できなければ魔女だと判定されてしまうこともあった。

「初めて出てきた語や、普段余り使わない語などを読み間違える」ような子供でさえ、【先天的な脳機能障害を持つ発達障害者】とされてしまうのである。

 

 目に余るのは、少しでも不適切な振る舞いをする子供たちに、すぐ「受診と投薬」を勧める教師や保育士の存在である。恐らく善意で勧めるのであろうが、中には「薬を飲むまで来ないでくれ」と実質的に服薬(向精神薬)を強要する悪質な事例も多くあるのである。
 まるでプロの自分の力量のなさを隠すかのように、全てを子供の脳のせいにして支援を装って体よく専門家(精神科医や小児科医)に厄介払いする姿勢が透けて見えるのである。

中世の西欧では、不可解な現象が起きると全て魔女のせいにされ実に多くの女性が、魔女として処刑されていった信じられない時代がありました。

 

 現在の日本では、何でもかんでも発達障害に結びつけられてしまう社会になっている。例えば、「大人の発達障害」という聞き慣れない言葉。確かに幼児性を残している大人は昔から現在も多数いましたが、単に無責任、甘えやすい、不熟な(成熟途上人)大人は、果たして病気の範疇にはいるのかどうか?大いに疑問です。

 

 このように、発達障害支援が暴走してしまうのも、根底に「もしかすると自分も発達障害かも?」という不安があるからだが、【誰かがそうした不安そのものを意図的に煽っているとしか考えられない】

第14回

 チェックリストを様々な現場に売り込む精神科医、専門家としてメデアに登場し受診を促す精神科医やその関係者、そのリストに疑問も抱くことなく安易に使用する現場の医師という構図があることで発達障害バブルが作られている。

さらに、親や教師が専門家に丸投げしたり、依存したりするような構造(特にメンタルヘルス領域)。

 精神障害や発達障害などは特に、素人によく分からない領域に属すが、【実は精神科医自身もよく分からない】というのが真実なのであるが、専門家に対して素人が口出しするのは現実的に難しい。

 

 精神科医の中には、能力や資質、人間性に問題を抱える者が一定数存在する。

いったん、チェックリストで間違ったレッテルを貼り付けられてしまえば、そう簡単には剥がせず、不必要な投薬やデタラメな治療は、取り返しのつかない被害を生じさせてしまう。

 

【親や教師が、それぞれの専門性から感じた違和感を大切にすれば、そのような被害を未然に防ぐことが出来る】。

【専門家が間違ったことをするはずがないという思い込みが悲劇を生む】。

 

 医師と向精神薬の消費量が増えたら、患者はどんどん治って減少するはずなのに、結果は逆になっている。患者は増え続け、自立支援医療費は際限なく増加し、強制入院の数や身体拘束の数、死亡退院の数は軒並み増加しているのである。

【精神病退院のうち、1ヶ月で治癒して退院したのは300人であるのに対し死亡退院では2000人にも達している(年間、24000人)。しかも、死亡退院の4分の1以上は、入院後3ヶ月にも及んでいるのである】。

 

 又、2009年1月~12月の【精神科で治療中の患者の自殺率】の内訳は、人口10万人に対して【通院患者100.5に対して入院患者154.5と入院の方が、通院の1.5倍】なのである。

【向精神薬による精神科治療が自殺を減らしたという根拠はないばかりか、むしろ粗悪な精神科治療が自殺を促している可能性が高いのである】。

【全国自死遺族連合会が行った遺族への聞き取り調査結果によれば、2010年4月~2013年2月までの自死のうち、なんと90%以上が精神科受診を行っていたのである】。

 

 精神医学は、現在に到るまで、【精神障害や発達障害の原因特定も、根本的な治療法の開発も一つとして成し遂げたことはない。ここまで脳の検査技術が進んでも、遺伝子解析の技術が発展しても、「あと少しで解明できる」という段階ですらなく、本当にそれが「脳の疾患」であるかすら全く分かっていいないのである】。

【唯一、成功してきたことそれは「鎮静化」させることだけなのである。そして、それが患者にとって最善であると信じ込んでいる精神科医が多数を占めているのが現状】(続く)。
 

第15回

 精神科医は、医師に逆らわず周囲の言うことを聞いて大人しく過ごし、【一生、薬を飲み続けることこそが患者の幸せ】だと本気で思っている。そのため、薬が効かなくなれば単純に薬の量や種類を増やすという安易な手法を躊躇なく出来てしまう(多剤大量処方)。

 

1日に向精神薬のみで89錠も服用していた患者がいるのである(2018年当時)。

 恐ろしいことに、精神科病院で【患者を鎮静化させる感覚を発達障害の領域に入り込んできている精神科医が多数いる】ことである。

 

 我々が、精神科医に望むメンタルヘルスのゴールは、【生き生きとした自分を取り戻し、自己決定や責任を回復した姿、薬も通院も必要なく、問題を自分で乗り越えられる知識や能力を身につけている状態である。しかし、鎮静化を求める精神科医のゴールは、青の対極にある。人の命令に従い、ぼんやりと無気力で薬と福祉の世話を受けて生きてゆく患者なのである】。

 

 それでは、なぜこのような精神科医が存在するのか?実は、歴史的に精神医学とは最初からそういうものだったのである。

インシュリンショック療法(インシュリンを体内に注入し、人為的に低血糖状態を作りだしショック状態にさせる)、電気けいれん療法などのショック療法、発熱療法(マラリアに感染させ高熱を出させる療法)、ロボトミー手術に代表される精神外科手術など、残虐行為が治療とされ、ひたすら患者の【鎮静化】が試みられたのである。

 

 1949年の日本精神病院協会の設立趣意書には以下のような文言が盛り込まれていた。

【精神病院は・・・常に平和と文化との妨害者である精神障害者に対する文化的施設の一環である】

精神医療施設は、その設立当初から【社会にとって危険な人々を収容するという、いわば社会防衛システムとして発展してきた歴史がある】。

 近代精神医学はドイツが発祥だが、日本はそれを直輸入しており、併せて優生思想もそのまま取り込んできた。

【精神病が遺伝することを科学的に証明した人は1人もいないのに、ナチスのプロパガンダによる虚構の思想に引きずられ】、1940年の「国民優生法」、1948年の「旧優生保護法」の公布・施行を経て、1953年、日本の精神医学会からな「精神障害者の遺伝を防止するため、優生手術の実施を促進せしむる財政措置を講ずること」という陳情書が厚労省に提出され、急速に【強制不妊手術】が増加していったのである。

 

 2010年、ドイツの精神医学会の年次総会で、それまで自身が行ってきた医療の在り方そのものに対する謝罪表明を行った。戦後70年経つまで自らの非を認めなかったという点では、必ずしも自浄作用が働いたのではなく、ナチスやヒトラーを隠れ蓑にした精神医学の犯罪を追及する声が上がり、もはや隠しきれなくなった事情があったにせよ。

 

 では、日本の精神医学はどうか?

【精神障害が遺伝するという根拠のない情報を広め、法の成立、強制不妊手術の実施やその対象の判定、普及、促進に精神医学関連周辺団体からは、今も公式の謝罪や反省の言葉はないのである】(続く)。

 

第16回​

 日本の精神医学はナチスのイデオロギーと決別していない。隔離収容主義、多剤大量処方、長期漫然処方・・【まだドイツの亡霊を引きずっている】。

 

 精神医療業界は最早、自浄作用を働かせることが出来ず、自発的に解決する兆しすら見えないのが現状。

そこに、製薬会社による巨額のマーケティング資金が投入され、マスメディアと通して病気や障害が喧伝され、その解決策として薬が売り込まれるアメリカ型の精神医学が日本に本格的に輸入された。

 それが1999年からの【うつ病バブル】であった。重要なことは、そのターゲットが膨大な【一般人】とされたことである。

それ以前、日本の精神医学の対象は、主に重度の精神障害者だけであり、一般人にとっては無関係で別世界の問題であったのに。

 

 精神病院内で行われてきた多剤大量処方が、精神科や心療内科を標榜する街角のクリニックで、より幅広い人々を対象に行われるようになった。人々は【DSMの乱用】でしかないチェックリスト診断だけで、病名をつけられ目を覆うようなデタラメな処方をされた。

 現在の日本の向精神薬による薬害は、本場アメリカを凌ぐ悲惨な状態にある。

アメリカでは、精神医学と製薬会社が猛威を振るう一方で、保険会社と弁護士が強い抑止力として機能し、大規模な集団訴訟が次々と引き起こされている。

 保険会社は科学的な根拠のない投薬に対して保険を支払わない。

 

 一方、日本では、医師のみが薬を処方する権限を持ち、薬剤師は調剤権しかなく、皆の公金を預かっているはずの保険社も医師に強くものを言えず、デタラメ治療の抑止力としてほとんど機能しない。

 日本の医療全体を統括する厚労省は、薬害が表面化するまで、向精神薬処方の実態すら把握していなかった。実態調査を開始したのは2009年からである。

 

 その調査結果を踏まえ、ようやく、2010年以降、向精神薬の多剤大量処方を規制するような通知や診療報酬の改定、問題となっていた特定の向精神薬の規制や販売停止など一部が実現した(その直後、医師会からの抵抗でかなり規制は骨抜きにされてしまい、多くの精神医療の現場では以前と余り変わらない処方が行われ続けている)。

 2010年以降に、自殺者が減少してきたのは、これらの規制と無関係ではない。

 

 しかし、精神科医たちは【早期発見、早期治療を進めてきた自分たちの取り組みのおかげで自殺が減少した】と、まるで自分たちの手柄であるかのように思い込んでいるようである。

外圧が高まり、【診療報酬の制限という形をとらなければ、精神医療業界は自らは状況を改善できない不名誉な状況が続いているのである】

 

第17回

 

 発達障害に関しては精神科医のみならず、小児神経科医や小児科医も多数関わっていて、表面上は、誠実に、又、慎重な姿勢で子供たちを支援していこうとする医師も多数いる。

しかし、子供たちに根拠なく病気のレッテルを貼り、選別し、危険な投薬をしているのも事実なのである【実際の被害事例は後日、紹介予定】。

 

 厄介なのは、彼らは悪意をもってそれをしているのではなく善意のつもりでやっているのである。いや、純粋な善意と言うよりは【悪意を自覚しない錯覚の善意】といった方が正しいかもしれない。そこには、人間に対する敬意が全く感じられない。

悲劇は、そのような精神科医が、非常に強い権限を与えられてしまったことにある。精神科医(後述の精神保健指定医)には、他人の人権を剥奪できる権限がある(強制入院、身体拘束、隔離など)。又、脳に直接、作用し、危険な副作用のある向精神薬を投与することも出来る。

 

 【補足すると、2016年、「精神保健指定医」89名も、その資格の不正取得が発覚し、厚労省から資格取消処分を受けている】。

 何より最大の問題は、科学的根拠を示さずにそれが出来てしまうことなのである。

通常、医療上の「冤罪」(誤診とそれに付随する治療内容)が起こらないよう最大限、配慮されるべきなのに、【精神医療の分野では「冤罪」が普通に起こりうるだけでなく、そこから身を守ったり抜け出したりする手段がほとんどないという現実がある】。

 

 旧優生保護法を実質的に強化した「精神衛生法」(1950年)が制定された。これにより、特定の精神科医には、本人の意思に反した強制入院の決定や、隔離拘束などの行動制限を行う権限が与えられたのである。

この法案が国会に提出された時、日本精神病院協会の顧問であった中山壽彦参議院議員は、同法の趣旨について以下のように述べている。

 

「法案の大要について申し上げますと、第一に、この法案は、苟も正常な社会生活を破壊する危険のある精神障害者全般をその対象としてつかむことにしました。従来の狭義の精神病者だけでなく、精神薄弱者及び精神病質者をも加えたのであります」。

精神障害者を、【治療の対象ではなく、危険分子】として見なしていたのである。

 

 発達障害者支援法は早期発見至上主義に陥るあまり、その被害を防ぐことについて十分な対策を講じてはいない。

支援の推進者は、法的な支援も周囲の理解もなく苦しんできた、いわば少数派で立場の弱い人を救うために活動をしている。

しかし、そうした支援者たちが、過剰診断やデタラメな治療被害について苦しむ人々の声を「極端な例」として切り捨てて無視してきたことは忘れてはならない。支援法で助けられたという人は大勢いるかもしれない。【しかし、だからといって、逆に被害を受けた人々を無視しても良いという理由にはならない】(続く)。

 

第18回

 

 精神疾患者の【強制不妊手術の問題】については、現在に到るまで国や自治体、専門家たちは反省や謝罪を一切示していない。

 しかし、大きな転機となったのは、その被害者が勇気を出して声を上げ、国の責任を問うために提訴したことである。

誰かが声を上げることが最初のステップだが、それが大きなものとならない限り既得権力によってつぶされてしまうのである。

 

 象徴的な事件が2012年10月岐阜で起こった。10歳の男児が突然死を遂げたのである。

この男児は、日本脳炎ワクチン接種後に心肺停止となり、当初はそのワクチンが疑われたが、男児は「広汎性発達障害」と診断され、3種類の向精神薬が処方されていた。

 

 エビリファイ(双極性障害に使われる抗精神病薬)と、オーラップ(自閉症に使われる抗精神病薬)、ジェイゾロフト(抗うつ薬)。ところが、オーラップとジェイゾロフトの併用は、心血管系に重篤な副作用の危険性が指摘されその【併用は禁止】されていたのである。

 男児の母は「かかりつけ医を信用しており、併用禁止とは知らなかった」と証言。その児童精神科医は次のように弁解した。

 

「2つの薬の併用がいけないという指定があることは知っていた。あの薬が処方した量で影響を与えているとは思えない。少量であれば安全だという判断だ」。

 

 この児童精神科医は、明らかにインフォームドコンセント(処方薬の説明と同意)をせず、又、これらの薬は【適応外処方】(本来の病気用以外の薬を処方する)であり、その安全性は確かめられていないのである。さらに危険性が確かめられている【併用禁忌】の処方をしているのである。

 

 結果的に、この児童精神科医は公然と責任を問われることはなかった。当初は警察も動いたが、【死亡と処方薬との因果関係が不明】ということで、早々と警察は引き上げてしまった。

心療内科やメンタルクリニックが、全国的に急増した背景には、製薬会社のうつ病などのキャンペーンとSSRI(抗うつ薬)の販売、そして何よりも机と椅子だけあれば開業できるという経営上の背景がある。
                                                    
 そして、十分な専門的な知識や経験がなくても、【児童精神科】を標榜することが出来るのであり、信じがたい犯罪が多発しているのが現状である(続く)。

 

第19回

以下に「発達障害」と診断され、以後の治療の被害を受けた実例を幾つか紹介する。
 

A. 三歳児健診で発達障害の疑いがかけられた女児。発達障害者支援センターを経由し手児童精神科医を受診。初診で「広汎性発   達障害」と診断され、いきなりリスパダールとエビリファイ(何れも強い抗精神病薬で統合失調症用の薬)を処方され、医師からは【全く副作用の心配はない】とだけ言われた。
 

B.  不登校気味だった小学校高学年男児。全く経過観察や鑑別検査もなく、初診で「アスペルガー症候群」と診断され、初日からエビリファイ3mgを処方(通常は1mg)され、その副作用でふらついて転倒し、救急搬送され大けがを負った。
 

C.  学校から促されて精神科を受診した小学校男児が、初診10分の問診だけで「ADHD」と診断。適応外処方であるリスパダールが処方され1週間後に男児は体の不調を訴えた。母親が医師に「薬の副作用では」と尋ねたら【そんなはずはない。飲ませ続けなさい】と全く対処してもらえなかった。
 これらは、皆、国立大学病院や児童相談所と連携している精神科病院や国・自治体の審議会メンバーに名を連ねる権威が運営している施設での実際の話である。

 

 この他にも、【患者の女子高生にわいせつ行為を働いたり、子供と共に来院した母親の不安につけ込む手口で。複数の母親と性的関係を持っていた自称児童精神科医、コンサータを横流して検挙された精神科医や、大量に向精神薬を暴力団に横流ししその犯罪が暴かれ一家心中した精神科医一家など枚挙にいとまがない】。
 

 こうしたデタラメな精神科医は、実は無視できない程の数ほどいる。
例えば、全国の精神科病院では、統合失調症の入院患者の4割に、3種類以上の抗精神病薬を同時に処方されているのである。エビデンスの一切ない多剤処方の実態が報道された(2013年8月20日「朝日新聞」)。

 

【初診で、一挙に1日89錠もの向精神薬が処方されたケースもある】。
こと精神科においては、【当たり外れが大きく、質の低いところはどこまでも限りなく低いというのが現実なのである】。
それはまさに【地雷そのもの】。

 

 現在の「発達障害バブル」下の「早期発見・早期治療」という大号令は、【まるで学校や公的機関が、わざわざ地雷を避難所として指定して、人々をそこへ誘導しているかのようである】。
 しかし、地雷が埋められているかもしれないというリスクを、あらかじめ伝えられた上で慎重にその場所に避難するのと、全く無防備な状態で避難するのとでは結果が全く違ってくる(続く)。

 

第20回

 

「精神科に行って救われている人もいる」「極端な例を挙げて一般化するな」という批判の声がある。

しかし、それらは全て「人々に防犯意識を持たせるな」と言っていることに等しい。

 どんな領域でも、大半の人々が真面目に誠実に職務を全うしている一方、一部の人々が悪事を働いている。

特に決まりが曖昧な領域では、不正や犯罪の温床になりやすい。だから精神医療という根拠もルールも曖昧な分野には、犯罪や人権侵害がはびこりやすいのである。

 

 行政機関を中心に行われているメンタルヘルス対策は、そのほとんどが「とにかく専門家につなげる」ことに専念している。

そこには、デタラメな専門家が存在し、被害に遭う危険性があるあるという視点は微塵もない。悪い人なんてこの世にいないんだよと言って、子供に一人で夜道を歩かせるレベルで、「夜道の一人歩きは危険だよ」と注意する大人が誰もいないような状況が、現在の「発達障害者支援」の現実なのである。

 

 2010年6月、国連の「児童の権利委員会」は、以下のような日本に対する最終報告を行った。

「委員会は、ADHDの治療に関する研究と医療従事者の研修がかいしされたことを歓迎するが、この現象が主に【薬物によって治療されるべき生理的障害と見なされ、社会的決定要因が適切に考慮されていないことを懸念する】」。

「委員会は、締約国がADHDの診断数の推移を監視すると共に、この分野における研究が、【製薬産業とは独立した形で実施されることを確保するよう勧告する】」。

 

 この勧告は日本だけではなく、全ての締約国に出されたが、ADHD薬が承認され販売が始まった国はどこでも、【ADHDの診断数と処方薬物の量が急増しているのである】。

 

【日本のADHD学会、及びその学会の運営費は、ADHD薬を製造販売する製薬会社からの資金提供でまかなわれ、学会の幹部にも製薬会社から金銭供与が行われているのである】。

 

 2010年4月~2016年3月まで、日本ADHD学会理事長市川宏伸氏は、先に紹介した「発達障害診断のための75項目のチェックリスト」を作成し、6%という架空の需要を作り出した中心的な役割を果たし、厚労省、文科省、法務省などの検討会や有識者メンバーとして「発達障害者支援法」の成立や、施行後の広がりについて大きな影響力を与えた。

 

 又、その一方で、日本自閉症協会会長、発達障害者各団体を束ねる日本発達障害ネットワーク理事長を兼任している。

同書によれば、その市川市は、【2013年にADHD薬のストラテラを販売する日本イーライリリー社から156万円、同コンサータを販売するヤンセンファーマ社から27万円を、翌2014年には、それぞれ200万円、156万円の金銭供与を受けていた。又、日本ADHD学会は、2013年にこの2社から350万円、2014年には2社から1340万円もの金銭供与を受けているのである。なお、その金額は、講師謝金、監修・原稿執筆料、コンサルティング等業務委託料の総合計である】。

 

【国連の勧告は完全に無視されている】。

 

 これだけの金銭供与を受けていながら、市川氏は、厚労省への報告には「利益相反の管理」項目に【無】とチェックしていたのである(市川氏は、その違反が発覚後、訂正して再提出している)。

 

 このような嘘の申告をしたのは、意図的な嘘か、研究者として致命的なまでの無知であるのかのどちらかであるが、彼は厚労相から委託された「ADHD薬物治療のガイドライン作成」の中心的存在であったのである。(このことが発覚後、市川氏は外された)

​​第21回

 発達障害をめぐる薬物療法、特にADHDに対する投薬について、製薬会社と利害関係がある精神科医が、製薬会社の過剰なマーケティングに荷担し、不必要な患者を作り出していることが世界的に問題になっている。

 

 アメリカで起きた「レベッカ・ライリー事件」。

当時2歳のレベッカは、健診で「ADHD」「小児性双極性障害」と診断され、児童精神科医から投薬を受け4歳で死亡した事件(2006年)。他の2人の兄弟も同じ意思から全く同様の診断を下され投薬治療を行っていた。

裁判では、「処方薬を過重に服薬させた」親の行為が直接の死因とされ、有罪判決を受けた。

 その児童精神科医は、子供をほとんど見ることなく、親の一方的な話だけで診断を下し投薬を繰り返していたことが判明。

長期的な向精神薬使用で、レベッカの心臓や肺にダメージを与えていたことが指摘され、その医師への批判の声が大きくなると、一時的に医師免許を返上し、2011年、250万ドルの和解金を遺族側に支払い、刑事訴追を免れ、再び児童精神科医として復帰した。

 さすがにこうした厚顔無恥な児童精神科医に対して医療界や法曹界から疑問の声が上がりました。

アメリカ国内では、「child killer」(子供殺し)と呼ばれ、実名、顔写真まで公表された児童精神科医(女性)は、その後、日本の

 

 とある精神科病院の小児思春期センター長を務めている。彼女は【日本人の女性児童精神科医】なのです。

そこでも、彼女は、慎重な診断や治療をせず、相変わらず、患者に対して、冷たく高圧的な態度で接し、インフォームドコンセントを全くせず、患者が通院していた前の病院で処方されていた抗うつ薬をいきなり中止するなど患者の状態を急激に不安定なものにするなどの被害者を出しているのである(既に、厚労省から、抗うつ薬の急激な減量に対する注意が喚起されていた)

第22回

 

 アメリカでは、向精神薬のオフラベルプロモーション(適応外処方の違法な販促)に対し、州政府や連邦政府が、大手製薬会社を次々と訴え、2009年頃から数百億から数千億円規模の巨額の和解金や罰金が支払われた。

 

 2012年、治験データを隠蔽した上、FDA(米食品医薬品局)の承認もなく、18才未満の患者に抗うつ薬パキシルの販売を促進し、グラクソ・スミスクライン社は違法行為を認め米司法局と30億ドルの和解金を支払うことで合意した。

 これらは【政府が不当な精神医療産業から子供たちを守るという強い決意の表れであり、アメリカ型精神医学によってもたらされたバブルがはじけたことを意味した】。

 

 一方、この日本ではどうだろう。

【精神医療における子供たちの死はうやむやにされ、スキャンダルは事務的ミスで片付けられ、誤診や過剰診断はないものとされ、米国市場を撤退し始めた大手製薬会社が日本の子供たちをターゲットにし、米国を追い出された児童精神科医が日本で堂々と診療をしているのである】。

 

 子供たちを守ると決意した米司法省や、国連の児童の権利委員会とは対照的に、【製薬会社に迎合し、過剰診断、過剰投薬を広げようとする自治体まで出現している】。

 

 2017年1月25日に、大阪府と塩野義製薬が「子どもの未来支援に関する事業連携協定」を結び、発達障害者支援を共同で進めることが決定し、同年4月7日に、共催で「発達障害シンポジウム」を開催した。

実は、このシンポジウム開催直前の3月30日に、塩野義製薬は新しいADHD薬「インチュ二ブ」の販売が厚労省から承認されていたのである。

 

 さらに、この発達障害の支援事業に関わる経費の一切は、塩野義製薬が全額支出し、大阪府は1円も出していなかった。

その理由を著者が問いただしたところ、大阪府の認識は「薬物治療を勧めるわけではないので問題はない」というものだったのである。

 

 薬の宣伝ではなく、【患者の掘り起こし】こそが、薬の売り上げに直結することは、「うつ病キャンペーン」で明らかで、このような啓発活動を装ったマーケティング手法こそ、その後の過剰診断やそれに伴う過剰投薬を生み出してきたのだ。

 

 このシンポジウムから1週間も経っていない2017年4月13日、塩野義製薬は追い打ちをかけるように、さらに新しいADHD薬「リスデキサンフェタミンメシル酸塩」の承認申請を厚労省に行ったと発表。

これは【発達障害バブルに乗じた非常に賢いマーケティング手法であり、大阪府は塩野義製薬の宣伝に完全に利用されたのである】


 

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